Futures Japan HIV陽性者のためのウェブ調査

調査結果

5.薬物使用

薬物の使用経験について

図5-1過去の薬物使用経験(N=1038)
図5-1過去の薬物使用経験(N=1038)
図5-2 過去1年間の使用経験(N=1038)
図5-2 過去1年間の使用経験(N=1038)

過去に薬物を1度も使用していない人は235人(22.6%)、一度は使用したことがあるとした人は803人(77.4%)でした(図5-1)(第1回調査時は、一度も使用していない:一度は使用したことがある=25.6%:74.4%)。
また、過去1年以内に使用したことがある人は188人(18.1%)、過去1年以内に使用していない人は850人(81.9%)でした(図5-2)(第1回調査時は、過去1年以内に使用した:過去1年以内に使用していない=31.2%:68.8%)。

図5-3 過去1年以内の薬物の使用状況(n=1038)
図5-3 過去1年以内の薬物の使用状況(n=1038)

過去1年間で使用した薬物の種類として最も多かったのはラッシュで114人(11.0%)で、次に覚せい剤(60人5.8%)、脱法ドラッグ・合法ドラッグとして売られているもの(45人、4.3%)の順になっていました(図5-3)。第1回調査結果でもっとも多かったのはラッシュ(229人、25.1%)でしたが、第2回調査結果では、使用者割合は半分以下となっていました。 また、脱法ドラッグ・合法ドラッグとして売られているものは第1回調査結果(124 人、13.6%)と比較して3分の1以下の使用者割合となっていました。他方で、覚せい剤は第1回調査結果(47人、5.1%)と第2回調査結果とではほぼ同水準でしたが、脱法ドラッグ・合法ドラッグとして売られているものの使用者の低下に伴い、相対的に順位は2番目に上昇していました。

薬物使用時の注射針の使用

過去1年間で注射針によって薬物を体内に注入したことがある人は50人でした。この50人のうち、注射針の使用にかかわる経験としては、「別の日に使った古い注射器を再度使った」(26人)、「注射針を刺したところが内出血した」(25人)、「注射器をうまく使えず何度も針を刺した」(21人)、「注射針を刺したところの痛みが数日続いた」(13人)、「別の人が使った注射器を洗って使った」(9人)、「同じ注射器を使って他の人と回し打ちをした」(5人)でした。

薬物使用に関する経験と考え方

過去1年間に薬物を使用したことがある188人においてみてみると、「薬物使用について誰か相談したり助けを求たかったが相談先や相手がみつからなかったことがある」人は27人(14.4%)、また、「これまでにあなたは、ご自身の薬物使用や薬物依存症について、専門家に相談したり診察を受けたりしたことはありますか」に対して、「ある」と回答した人は28人(14.9%)でした。

薬物使用に対して、これまでに「薬物を計画的にきちんと使えていた時期がある」と回答した人は98人(52.1%)、さらに、「今も薬物を計画的にきちんと使えている」と回答した人は36人(19.1%)でした。「できれば薬物を今後も使い続けたい」とした人は64人(34.0 % )となっていました(図5-4)。

図5-4 薬物使用にかかわる経験・考え方 (n=188)
図5-4薬物使用にかかわる経験・考え方 (n=188)

薬物使用の目的

過去1年間に薬物使用をした人の薬物使用の目的について複数回答形式でたずねました。その結果を該当者が多い順に表5-1に示してあります。もっとも多いものは「セックスの快感を高める方法」、次いで「ストレス発散の方法」、「ゲイライフをエンジョイするためのもの」、「孤独感を解消する方法」が続いていました。

表5-1 薬物を使用する機会の分布
薬物を使う意味 人数 (n=188)
セックスの快感を高める方法 156人 (83.0%)
ストレス発散の方法 64人 (34.0%)
ゲイライフをエンジョイするためのもの 50人 (26.6%)
孤独感を解消する方法 23人 (12.2%)
あえて背徳感にひたるためのもの 20人 (10.6%)
心の健康を保ったり向上させたりするための特効薬 15人 (8.0%)
死にたい気持ちに対処する方法 15人 (8.0%)
やめられないもの 14人 (7.4%)
人とつながるためになくてはならないもの 12人 (6.4%)
暇な時間を費やすためのもの 11人 (5.9%)
自分の存在を他の人にアピールする手段 6人 (3.2%)
都会生活をエンジョイするためのもの 6人 (3.2%)

当事者ミーティング、12ステップ、心理療法

これまでに自身の薬物使用や薬物依存症について、専門家に相談したり診察を受けたりしたことがある人は、過去1年以内に薬物を使用したことがある188人中28人(14.9%)でした。

NA(ナルコティクスアノニマス・薬物依存者の集まり)など、薬物依存症当事者のミーティングや自助グループに当事者として参加したことがある人は、過去1年以内に薬物を使用したことがある188人中20人(10.6%)、知っているが参加したことはない人は89人(47.3%)、当事者のミーティングや自助グループがあることを今初めて聞いた人は35人(18.6%)となっていました。

12ステップについては、すべて取り組んだ人は3人(1.6%)、一部を取り組んだ人は9人(4.8%)、12ステップという言葉を今初めて聞いたという人は129人(68.6%)でした。一方、SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)については、すべて取り組んだ人は2人(1.1%)、一部を取り組んだ人は1人(0.5%)であり、SMARPPという言葉を今初めて聞いた人が140人(74.5%)でした。

SMARPP以外の認知行動療法などの心理療法については、受けたことがあるし今も受けている人が4人(2.1%)、受けたことがあるが今は受けていない人が7人(3.7%)、心理療法という言葉を今初めて聞いた人が88人(46.8%)でした。