Futures Japan HIV陽性者のためのウェブ調査

調査結果

3.通院・入院

医療機関への通院

回答者1038人のうち、HIV治療を目的として医療機関へ受診している方は1002人(96.5%)であり、中断12人(1.2%)、未受診8人(0.8%)、受診予定15人(1.4%)でした。受診している方1002人の受診先は、エイズ拠点病院844人(84.2%)、エイズ拠点病院以外または不明の病院15人(1.5%)、診療所・クリニック84人(8.4%)などでした。また、その医療機関を受診している理由を尋ねたところ、「HIV治療で最初に行った医療機関だから」といった回答がもっとも多く、次いで、「HIV診療の専門性が高いから」、「主治医がていねいに対応してくれるから」、「通院距離が近いから」、「主治医以外の医療スタッフがていねいに対応してくれるから」、「他の診療科も受けやすいから」、「予約して診察してもらえるから」など、医療機関の利便性や医療スタッフの対応に関する理由が多くなっていました(図3-1)。一方、医療機関を受診していない方35人に受診していない理由を尋ねたところ、「HIV陽性であることがわかったばかりだから」と並んで「お金がかかるから」といった回答がもっとも多く、次いで、「特に具合が悪くないから」「生きていても仕方ないから」「時間帯が合わないから」「仕事など他の用事で忙しく時間がないから」などの理由が多くなっていました(図3-2)。

図3-1 現在の医療機関を受診している理由(%, n=1002, 複数回答)
図3-1 現在の医療機関を受診している理由(%, n=1002, 複数回答)
図3-2 受診していない方の医療機関を受診していない理由(%, n=35, 複数回答)
図3-2  受診していない方の医療機関を受診していない理由(%, n=35)

HIV治療の通院先の変更(転院)の経験

HIV治療の通院先の変更(転院)の経験を尋ねたところ、転院の経験が1回以上あった方は262人(全体の25.2%)でした(図3-3)。転院の理由としては、「転勤、転居のため」といった回答がもっとも多く、次いで、「職場や自宅等により近い、通院が便利なところに行きたいから」、「通院していた医療機関のスタッフを信頼できなくなったから」、「HIV診療の専門性がより高い医療機関に行きたいから」などの理由が多くあげられていました(図3-4)。

図3-3 HIV治療の通院先の変更(転院)の経験(n=1038)
図3-3 HIV治療の通院先の変更(転院)の経験(n=1038)
図3-4 転院経験者の転院した理由[複数回答](%, n=262)
図3-4 転院経験者の転院した理由[複数回答](%, n=262)

入院の経験

過去1年間における入院の経験を尋ねたところ、157人(15.1%)が1回以上の入院を経験していました(図3-5)。

入院経験のある157人についてみると、入院期間は、「1-9日」が62人(39.5%)でもっとも多く、次いで、「10-29日」52人(33.1%)、「30-89日」32人(20.4%)であり、主な入院目的は、「HIV以外の疾患の治療」77人(49.0%)、「HIVの治療」45人(28.7%)、「HIV以外の疾患の検査」22人(14.0%)などでした。

入院生活における不快な経験(改善してもらいたいような経験)を尋ねたところ、「HIVということで不必要に特別扱いされた」といった回答がもっとも多く、次いで、「HIV陽性者であるために嫌な目で見られた」、「医師の態度が横柄だった」、「看護師など医療スタッフの態度が横柄だった」、「HIV やエイズという言葉を他の人がいる前で声を出して言われた」などの意見が多くあげられていました(図3-6)。

図3-5 過去1年間における入院の経験(n=1038)
図3-5 過去1年間における入院の経験(n=1038)
図3-6 入院中における不快な経験[複数回答](%, n=157)
図3-6 入院中における不快な経験[複数回答](%, n=157)

かかりつけ医・かかりつけ歯科医への通院

かかりつけ医(風邪をひいたとき等、気軽に受診できる近隣の医療機関)がいる方は401人(38.6%)でした。そのうち、かかりつけ医へHIV陽性を伝えている割合は.「伝えている」157人(39.2%)、「一部に伝えている」36人(9.0%)、「まったく伝えていない」208人(51.9%)でした。

かかりつけ医にHIV陽性を一部またはまったく伝えていない方244人にHIV陽性を伝えていない理由を尋ねたところ、「伝える必要がないと思ったため」といった回答がもっとも多く、次いで、「受診拒否される心配があったため」、「プライバシーが確保されていないため」、「近所の人や家族に HIVのことを知られたくないため」などの理由が多くなっていました(図3-7)。

かかりつけ医がいない方633人のうち、かかりつけ医を必要としている方は、331人(52.3%)でした。また、地域の医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験を尋ねたところ、受診拒否の経験をしていた方は、「はっきり受診を断られた」・「やんわりと・別の理由を出して受診を断られた」の回答をあわせて(重複回答4人を除く)、103人(9.9%)でした(図3-8)。

図3-7 かかりつけ医に一部またはまったく伝えていない方のHIV陽性を伝えていない理由
(%, n=244, 複数回答)
図3-7 かかりつけ医に一部またはまったく伝えていない方のHIV陽性を伝えていない理由(%, n=244, 複数回答)
図3-8地域の医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験(%, n=1038, 複数回答)
図3-8地域の医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験(%, n=1038, 複数回答)

かかりつけ歯科医がいる方は477人(46.0%)でした。そのうち、かかりつけ歯科医へHIV陽性を伝えている割合は、「伝えている」224人(47.0%)、「一部に伝えている」15人(3.1%)、「まったく伝えていない」238人(49.9%)でした。

かかりつけ歯科医にHIV陽性を一部またはまったく伝えていない方253人にHIV陽性を伝えていない理由を尋ねたところ、「受診拒否される心配があったため」といった回答がもっとも多く、次いで、「伝える必要がないと思ったため」、「近所の人や家族にHIVのことを知られたくないため」、「プライバシーが確保されていないため」など理由が多くなっていました(図3-9)。

かかりつけ歯科医がいない方560人のうち、かかりつけ歯科医を必要としている方は、365人(65.2%)でした。また、地域の歯科医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験を尋ねたところ、受診拒否の経験をしていた方は、「はっきり受診を断られた」・「やんわりと・別の理由を出して受診を断られた」を合わせて(重複回答4人を除く)、71人(6.8%)でした(図3-10)。

図3-9 かかりつけ歯科医に一部またはまったく伝えていない方のHIV陽性を伝えていない理由
(%, n=253, 複数回答)
図3-9 かかりつけ歯科医に一部またはまったく伝えていない方のHIV陽性を伝えていない理由(%, n=253, 複数回答)
図3-10 地域の歯科医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験(%, n=1038, 複数回答)
図3-10 地域の歯科医療機関でのHIV陽性を理由とした受診拒否の経験(%, n=1038, 複数回答)

地域のかかりつけ薬局

地域のかかりつけ薬局(地域でいつもきまって利用する薬局)については、抗HIV薬を含むすべての薬について「ある」との回答が16.8%、抗HIV薬を除いた薬のみについて「ある」との回答が21.4%でした。

いずれかが「ある」と回答した396人に、地域のかかりつけ薬局にHIV陽性であることを伝えているかどうかたずねたところ(以下、n=396)、「伝えている」は39.6%にとどまり、「一部に伝えていない」が4.8%、「まったく伝えていないが、お薬手帳に抗HIV薬の処方が貼ってあるので気づいていると思う」が16.9%、「全く伝えていない」が38.6%でした。地域のかかりつけ薬局が「必要である」としたのは、全体の1038人のうちの55.2%でした。