調査結果
5.アディクション
医師に診断されたアディクションについて
何等かのアディクション(依存症)であると医師から診断されている人は85人(9.3%:参加者全体の%、以下同様)であった。診断されたアディクションの種類のうち、最も多いものから順に、ニコチン依存32人(3.5%)、薬物依存20人(2.2%)、アルコール依存10人(1.1%)、であった(図5-1)。これらの依存症を重複して発症している状況については、2つが11人、3つが1人、6つが1人であり、ほかは単独で発症していた。
なお、診断されていないものの、自分自身がそうではないかと感じている依存傾向の種類で高い頻度でみられていたものは以下の順である。インターネット依存277人(30.3%)、ニコチン依存228人(25.0%)、性依存219人(24%)、買い物依存215人(23.5%)、ギャンブル依存78人(8.5%)、アルコール依存75人(8.2%)、摂食障害71人(7.8%)、ゲーム依存66人(7.2)、薬物依存64人(7.0%)、恋愛依存60人(6.6%)。
何らかの興奮、落ち着き、強い幸福感、幻覚などをもたらす薬物使用の実態と種類
これまでに、何らかの興奮、落ち着き、強い幸福感、幻覚などをもたらす薬物や物質を使ったことがないと述べた人は234人(25.6%、参加者全体の%、以下同様)にとどまった。また、過去1年の間に、脱法ドラッグ・合法ドラッグ、ラッシュなどの亜硝酸アミル系、覚せい剤、5MeO-DIPT、大麻、MDMA、LSD、マジックマッシュルーム、ヘロイン、コカイン、有機溶剤、エアダスター・スプレー・ガス、医療用医薬品(リタリン・ケタミンなど)のうち、いずれかを使用したことがある者は285人(31.2%)であった(図5-2)。
これまでに使ったことがある薬物の種類は多いものから順に以下のようであった。ラッシュなどの亜硝酸アミル系635人(69.6%)、脱法ドラッグ(ハーブ・リキッド・錠剤など)・合法ドラッグとして売られているもの352人(38.6%)、5MeO-DIPT344人(37.7%)、エアダスター・スプレー・ガスの吸入183人(20.0%)、覚せい剤154人(16.9%)、大麻143人(15.7%)、MDMA82人(9.0%)、医療用医薬品(リタリン・ケタミンなど)62人(6.8%)、LSD46人(5.0%)、有機溶剤の吸入42人(4.6%)、コカイン41人(4.5%)、マジックマッシュルーム34人(3.7%)、ヘロイン24人(2.6%)。過去1年間の使用状況は図5-3に示す通りである。
薬物を使用した際にすでにHIV陽性であることが分かっていたかどうかについて、わかっていたという人は74人で、わかっていなかったと述べた人は535人であった。また、本項目に回答した者(609人(66.7%))のうち、はじめて薬物を使った時期については、3年以内73人(8.0%) 、4~9年前162人(17.7%)、10~19年前285人(31.2%)20年以上前92人(10.1%)であった。
どのような時に薬物を使いたくなるのか
何らかの興奮、落ち着き、強い幸福感、幻覚などをもたらす薬物について、どのような時に使いたくなるのかについて、頻度順に度数および%(これまでに使ったことがあるとみられる679人における%の値)を示していく。(1位)セックスをするとき480人(70.7%)、(2位)一緒に使う人がいるとき277人(40.8%)、(3位)すすめられたとき273人(40.2%)、(4位)マスターベーション(自慰行為)をするとき236人(34.8%)、(5位)淫らな気分になったとき145人(21.4%)、(6位)強いストレスを感じたとき79人(11.6%)、(7位)休日54人(8.0%)、(8位)物事がうまくいかないとき47人(6.9%)、(9位)イライラしたとき35人(5.2%)、(10位)クラブに行くとき・行ったとき34人(5.0%)、(10位)いつのまにか34人(5.0%)。表5-1に詳細を示す。
人数 | % | |
---|---|---|
セックスをするとき | 480 | 70.7 |
一緒に使う人がいるとき | 277 | 40.8 |
すすめられたとき | 273 | 40.2 |
マスターベーション(自慰行為)をするとき | 236 | 34.8 |
淫らな気分になったとき | 145 | 21.4 |
強いストレスを感じたとき | 79 | 11.6 |
休日 | 54 | 8.0 |
物事がうまくいかないとき | 47 | 6.9 |
イライラしたとき | 35 | 5.2 |
クラブに行くとき・行ったとき | 34 | 5.0 |
いつのまにか | 34 | 5.0 |
仕事のプレッシャーを感じたとき | 33 | 4.9 |
人数 | % | |
---|---|---|
何かに挫折したとき | 33 | 4.9 |
つまらないと感じたとき | 33 | 4.9 |
一人になったとき | 32 | 4.7 |
疲れているとき | 28 | 4.1 |
お酒を飲んだとき | 19 | 2.8 |
パーティのとき | 18 | 2.7 |
その他 | 17 | 2.5 |
仕事や勉強に弾みをつけるとき | 11 | 1.6 |
音楽を聴くとき | 10 | 1.5 |
正月やクリスマスなど世間で年中行事がされる時期 | 10 | 1.5 |
物事がうまくいったとき | 8 | 1.2 |
何か自分にとって重要なことを決めざるを得ないとき | 8 | 1.2 |
アルコール依存傾向について
久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)を用いた。これは、全14問の質問を通じて、各質問の回答に得点を割り当てることで、アルコール依存症患者(重篤問題飲酒群)、その傾向がある者(問題飲酒群)、注意が必要な者(問題飲酒予備軍)、正常飲酒者、のそれぞれを判定するものである。まず、最近6か月間にお酒を飲んだという人は717人(78.5%)で、そのうちKASTを回答したのは687人であった。次に、判定の結果は、正常飲酒者は374人(54.4%:KAST回答者687人における%、以下同様)で、問題飲酒予備軍に該当する者は169人(24.6%)、問題飲酒群は30人(4.4)%。重篤問題飲酒群は114人(16.6%、全体のなかでは12.5%)であった(図5-4)。参考までに、厚生労働省が行った全国調査(10)では、このKASTを用いたアルコール依存症患者の割合(KASTの重篤問題飲酒群に相当)は、男性の7.4%、女性の1.5%と推定された。
当事者ミーティング、12ステップ、心理療法
NA(薬物依存症者の集まり)やAA(アルコール依存症者の集まり)など、依存症当事者のミーティングや自助グループについて、「依存症当事者のミーティングや自助グループがあることを今初めて聞いた」人は209人(22.9%、全参加者における%、以下同様)、「当事者として参加したことがある」人は30人(3.3%)、知っているが参加したことはない人は659人(72.2%)であった。
「12ステップ」とは、アルコールや薬物など様々な依存症の患者が共通して、回復に向かって行動するための指針のことで、多くの当事者ミーティングや回復施設において取り入れられている。この「12ステップ」について、「12ステップという言葉を今初めて聞いた」は764人(83.7%)、「12ステップすべて取り組んだ」11人(1.2%)、「12ステップの一部を取り組んだ」17人(1.9%)、「12ステップを知っているし、取り組む必要があると思っているが、実際には取り組んだことはない」20人(2.2%)、「12ステップを知っているが、自分は取り組む必要がないので、実際には取り組んだことはない」93人(10.2%)であった。
認知行動療法などの心理療法については、「心理療法という言葉を今初めて聞いた」人は373人( 40.9%)、「受けたことがあるし、今も受けている」14人(1.5%)、「受けたことはあるが、今は受けていない」32人(3.5%)、「心理療法を知っているし、受ける必要があると思っているが、実際には受けたことはない」58人(6.4%)、「心理療法を知っているが、自分は受ける必要がないので、実際には受けたことはない」426人(46.7%)であった。
(10)厚生労働省「成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究」(主任研究者 樋口進)報告書http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/061122b.html