Futures Japan HIV陽性者のためのウェブ調査

調査結果

4.セクシュアルヘルス

セクシュアルヘルス全般について

この1年間のセックスの頻度(図4-1)は、「まったくしていない」が190人(20.8%)ともっとも多く、次いで多いのが「月に2~3回」の188人(20.6%)であった。

これまで同性とセックスしたことがある人は844人(92.4%)であり、その割合を性別で見ると、男性では95.9%、女性では12.1%であった。

この1年間のお金にかかわりのあるセックスは「相手にお金を払ってセックスをした」が95人(10.4%)、「援助やサポートとしてお金をもらってセックスをした」が40人(4.4%)、「セックスや売り専としてお金をもらってセックスをした」が38人(4.2%)。
今の性生活に「おおいに/まあ満足している」人は314人(34.4%)。それに対し「あまり/まったく満足していない」人の割合は594人(65.1%)と、「おおいに/まあ満足している」人の割合の2倍近くに及んだ。

図4-1 この1年間のセックスの頻度 (%、n=913)
図4-1 この1年間のセックスの頻度 (%、n=913)

特定の付き合っている人・配偶者との関係

特定の付き合っている人・配偶者がいる人は405人(44.4%)。そのうち44人は相手が2~5人と複数であった(405人中10.9%、以下同様に原則として405人中の%)。主な相手の性別は355人(87.6%)が男性。回答者の性別からみると、女性20人では相手は全員男性、男性380人では87.9%が相手も男性であった。

その相手との関係についてみると、期間が0年~35年であり、平均値6.7年、中央値5年。相手のHIVステータスは陽性90人(22.2%)、陰性247人(61.0%)、わからない65人(16.0%)。相手は「あなたがHIV陽性であることを知っている」「たぶん知っている」はあわせて346人(85.4%)。これを相手のHIVステータス別にみると、相手が陽性の場合97.7%、陰性の場合89.5%に比べて、陽性か陰性かわからない場合は59.3%と低くなっていた。相手との関係を「今後もずっと続けていきたい」「どちらかというと今後も続けていきたい」が、あわせると374人(92.3%)であった。

特定の付き合っている人・配偶者とのセックス

(主な)特定の付き合っている人・配偶者とのセックスがこの1年間にあったとする人は236人(全体の25.8%)。セックスの回数は1~300回で、平均値18.8回、中央値10回。

その相手にアナルや膣に挿入される側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入されたとする158人中98人(62.0%)。男性に限ってみると、その相手とアナルや膣に挿入する側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入したとする131人中82人(62.6%)。特定の付き合っている人・配偶者とのコンドーム使用状況全般について、「これでよいと思う」「どちらかといえばこれでよいと思う」が当該設問回答者236人中173人(73.3%)であった。

その場限りの相手とのセックス

その場限りの相手とのセックスがこの1年間にあったとする人は542人(全体の59.4%)。セックスの回数は1~620回で、平均値17.8回、中央値6回。年間で50回を超える人も46人いた(その場限りの相手とのセックスがこの1年間にあった542人中8.5%、以下同様に原則として542人中の%)。相手の性別がすべて男性であったのは515人(95.2%)。回答者の性別からみると、女性4人の相手は全員男性、男性では536人中95.1%が相手も男性であった。相手のHIVステータスは「ほぼ全員陽性」12人(2.2%)、「一部陽性」102人(18.8%)、「陽性者はまったくいない」23人(4.2%)、「まったくわからない」403人(74.4%)。相手に陽性であることを「ほぼ全員に」「一部に」伝えた人は146人(26.9%)。これを相手のHIVステータス別にみると、相手がほぼ全員陽性の場合83.3%、一部陽性の場合71.6%、陰性の場合69.6%に比べて、陽性か陰性かわからない場合は11.7%と低くなっていた。

その相手にアナルや膣に挿入される側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入されたとする440人中253人(57.5%)。男性に限ってみると、その相手とアナルや膣に挿入する側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入したとする359人中209人(58.2%)。その場限りの相手とのコンドーム使用状況全般について、「これでよいと思う」「どちらかといえばこれでよいと思う」が当該設問回答者541人中293人(54.2%)であった。

特定のセックスパートナーとのセックス

特定のセックスパートナーとのセックスがこの1年間にあったとする人は305人(全体の33.4%)と、特定の付き合っている人・配偶者、およびその場限りの相手と比べると、中間に位置する割合であった。セックスの回数は1~120回で、平均値13.1回、中央値6回。年間で50回以上の人は19人(特定のセックスパートナーとのセックスがこの1年間にあった305人中6.2%、以下同様に原則として305人中の%)いた。特定のセックスパートナーの数は1人~50人で、平均値2.9人、中央値2人。

その相手の性別がすべて男性であったのは290人(95.0%)であった。回答者の性別からみると、女性3人のうち2人は相手が男性、男性では300人中95.7%が相手も男性であった。相手のHIVステータスは「ほぼ全員陽性」31人(10.2%)、「一部陽性」68人(22.3%)、「陽性者はまったくいない」47人(15.4%)、「まったくわからない」159人(52.1%)。相手に陽性であることを「ほぼ全員に」「一部に」伝えた人は162人(53.1%)。これについても、相手のHIVステータス別にみると、相手がほぼ全員陽性の場合96.8%、一部陽性の場合85.3%、陰性の場合83.0%に比べて、陽性か陰性かわからない場合は22.3%と低くなっていた。

その相手にアナルや膣に挿入される側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入されたとする236人中124人(52.5%)。男性に限ると、その相手とアナルや膣に挿入する側をしたときコンドームを「必ず使った」「使うことが多かった」人は、挿入したとする188人中109人(58.0%)。特定のセックスパートナーとのコンドーム使用状況全般について、「これでよいと思う」「どちらかといえばこれでよいと思う」が当該設問回答者304人中197人(64.8%)であった。

HIV陽性とわかる以前と比べた今のセックスの状況

HIV陽性とわかる以前に比べての今のセックス状況についてたずねたところ(図4-2)、回数がかなり/少し減っている人は681人(全体の74.6%)、相手の数がかなり/少し減っている人は663人(72.6%)であった。男性に限っては、まったく/やや勃起しなくなった人は286人(41.4%)であった。

図4-2 HIV陽性とわかる以前と比べた今のセックスの状況 (%、n=913)
図4-2  HIV陽性とわかる以前と比べた今のセックスの状況 (%、n=913)

セックスについての考え

図4-3のように、セックスのために薬をきちんと飲もうと思っている人や、セックスの相手へのHIV感染を気にしている人が各々8割近くにのぼっていた。

図4-3 セックスについての考え (%、n=913)
図4-3 セックスについての考え (%、n=913)

セックスに関連した諸経験:性感染症・経済面・薬物等

これまでに罹患したことがある性感染症として1割以上があげたものを多い順に並べると、毛じらみ284人(31.1%)、梅毒278人(30.4%)、B型肝炎191人(20.9%)、尖圭コンジローマ147人(16.1%)、淋病106人(11.6%)、尿道炎99人(10.8%)であった。

これまでに、風俗通い、有料動画、ハッテン場通いなど(薬物以外で)セックスに関連した出費のために経済的に極めて苦しくなったことがある人は138人(15.1%)、セックスや性的活動が理由で仕事や学業で支障をきたしたことがこれまである人は138人(15.1%)、セックスや性的活動により家族やパートナー、友人との関係が悪くなったことがある人は176人(19.3%)であった。

過去1年間に、セックスのために使ったことがある薬物・お酒・勃起薬は、多い順に、バイアグラ等勃起薬212人(23.2%)、ラッシュ・フラッシュなど亜硝酸アミル類186人(20.4%)、お酒・アルコール183人(20.0%)、ハーブ・リキッドなど脱法ドラッグ92人(10.1%)、覚せい剤37人(4.1%)、エアダスター・スプレー・ガス21人(2.3%)、5MeO-DIPTが11人(1.2%)であった。

セクシュアルヘルスについての相談

図4-4に示すように、過去1年間に、セックスや性的活動について誰にも話せず居場所がないと感じたことがある人は322人(35.3%)、主治医や看護師など医療機関のスタッフにセックスや性的活動について正直に伝えずにいたりはぐらかした経験がある人は282人(30.9%)を占めた。「性感染症にかかったかもしれないと思ったが、HIVの主治医には言いづらかったので、別の医療機関を受診したことがある。」も約1割存在した。

図4-4 セクシュアルヘルスについての相談 (%、n=913)
図4-4 セクシュアルヘルスについての相談 (%、n=913)

セーファーセックスの疲労感(fatigue)について「セーファーにしようと注意を払うことに疲れている」「セーファーセックスをし続けることは難しい」「セーファーセックスし続けることはかなりの努力が必要」の3項目で尋ねたところ(図4-5)、各々3~4割の人が「あてはまる」とし、安全なセックスを行い続けることに関して疲労感を感じていた。

図4-5 セーファーセックスの疲労感(fatigue)(人)
図4-5 セーファーセックスの疲労感(fatigue)(人)