Futures Japan HIV陽性者のためのウェブ調査

調査結果

3.通院

医療機関への通院

回答者913人のうち、HIV治療を目的として医療機関へ受診しているものは881人(96.5%)であった。また、主に通院している先の73.7%は、エイズ治療拠点病院(ブロック拠点病院29.1%、中核拠点病院23.7%、その他の拠点病院20.9%)であった(図3-1)。都道府県別でみると、東京都34.7%、大阪府16.3%、愛知県6.6%、北海道4.4%、福岡県3.6%が多く、通院先が一部医療機関及び都市圏に集中している傾向がみられた(図3-2)。

図3-1 HIV感染症の治療で主に通院している医療機関(%、n=913)
図3-1 HIV感染症の治療で主に通院している医療機関(%、n=913)
図3-2 HIV感染症の治療で主に通院している医療機関【都道府県別】 (%、n=913)
図3-2 HIV感染症の治療で主に通院している医療機関【都道府県別】 (%、n=913)

通院している881人に、通院状況の詳細をたずねた。
通院頻度は、「3ヶ月に1回」が30.4%(881人中268人、以下同様881人中の%)、「2ヶ月に1回」29.7%(262人)、「1ヶ月に1回」27.5%(242人)が多かった。通院先の医療機関のタイプによって、通院頻度は異なっていた(図3-3)。

図3-3 通院している医療機関別通院頻度(%、n=881)
図3-3 通院している医療機関別通院頻度(%、n=881)

通院時間は、「30分~1時間未満」42.9%(881人中378人、以下同様881人中の%)、「10~30分未満」26.3%(232人)、「1時間~1時間半未満」19.3%(170人)が多かった。一方で、1時間半を超えている人も7.7%(68人)に及んだ(図3-4)。また、通院の為の有給休暇取得の有無を尋ねたところ、「いつも取得している」34.2%(301人)、「ときどき取得している」26.0%(229人)との回答があり、半数以上のものが、通院の為に有給休暇を取得していた。

図3-4 医療機関への片道通院時間(%、n=881)
図3-4 医療機関への片道通院時間(%、n=881)

また、診療状況に関しては、医療機関での滞在時間は、「1時間~1時間半未満」24.4%(881人中215名、以下同様881人中)、「2時間~3時間未満」19.9%(175人)、「30分~1時間未満」19.8%(174人)が多く、また、実際の診療時間は、「10~30分未満」51.0%(449人)、「10分未満」31.4%(277人)、「30分~1時間未満」13.3%(117人)が多かった。

かかりつけ医・かかりつけ歯科医への通院

回答者全体の38.1%は、かかりつけ医(風邪をひいたとき等、気軽に受診できる近隣の医療機関)がいると回答した(図3-5)。しかし、かかりつけ医のいるもののうち、約半数にあたる49.1%(348人中171人)は、自身がHIV陽性であることをかかりつけ医に伝えていなかった(図3-6)。また、かかりつけ医のいないものの52.0%(563人中293人)は、かかりつけ医を必要としているにもかかわらず、その通院先を確保できていなかった。

図3-5 かかりつけ医の有無(%、n=913)
図3-5 かかりつけ医の有無(%、n=913)
図3-6 かかりつけ医へHIV陽性を伝えているか
(%、n=348:かかりつけ医のいる人の中で)
図3-6 かかりつけ医へHIV陽性を伝えているか(%、n=348:かかりつけ医のいる人の中で)

また、回答者の43.2%は、かかりつけ歯科医がいると回答した(図3-7)が、約半数にあたる41.4%(394人中163人)は、自身がHIV陽性であることを通院先に伝えていなかった(図3-8)。また、かかりつけ歯科医のいないものの63.6%(517人中329人)は、かかりつけ医と同様、その通院先を必要としながらも、確保できていなかった。

図3-7 かかりつけ歯科医の有無(%、n=913)
図3-7 かかりつけ歯科医の有無(%、n=913)
図3-8 かかりつけ歯科医へHIV陽性を伝えているか
(%、n=394:かかりつけ歯科医のいる人の中で)
図3-8 かかりつけ歯科医へHIV陽性を伝えているか(%、n=394:かかりつけ歯科医のいる人の中で)

精神科・心療内科への通院

回答者のうち、医療機関においてメンタルヘルスに関する相談をした経験があるものは、41.7%であった。

また、この1年間で、精神科・心療内科を受診したものの割合は、24.9%、精神科関連の薬剤服用に関しては、睡眠導入剤・睡眠剤32.3%、抗不安薬・精神安定剤17.7%、抗うつ薬13.8%など、睡眠、うつ、不安に関する薬剤の服用が多かった(図3-9)。

図3-9 過去1年間の精神科関連の薬剤服用(%、n=913)
図3-9 過去1年間の精神科関連の薬剤服用(%、n=913)

医療スタッフとのコミュニケーション

医療機関に通院している陽性者881人のうち、医療スタッフに相談したい内容があるにもかかわらず、相談できなかったという経験をしているものは244人(27.7%)であった(図3-10)。また、その244人について見ると、医療スタッフに相談したかったができなかった内容として多かったものは、「体調の悪化や気になる症状やつらさ」44.3%、「治療や検査値の結果などの情報を十分に得られていないこと」24.2%などの治療や症状に関する内容、「気持ちの落ち込みや不眠」40.6%、「日常のストレスとその解決策」31.6%などのメンタルヘルスに関する内容、「性生活の悩みや疑問」31.6%、「セーファーセックスの疑問や悩み」24.6%などの性生活に関する内容であった(図3-11)。

相談ができなかった理由としては、「医療スタッフの前では良い患者を演じてしまう」12.6%、「医療スタッフが忙しそうにしている」11.0%、「自分にとっては重要な内容だが、医療スタッフはそう思っていないと感じる」9.9%、「医療スタッフに聞いてよい内容なのか迷いがある」8.3%、「医療スタッフと信頼関係ができていない」5.6%などの、医療スタッフとの認識の差や信頼関係の低さに関する理由が多かった。

図3-10 医療スタッフに相談したい内容が、相談できなかった経験の有無(%、n=881)
図3-10 医療スタッフに相談したい内容が、相談できなかった経験の有無(%、n=881)
図3-11 医療スタッフに相談したかった内容 (%、n=244)
図3-11 医療スタッフに相談したかった内容 (%、n=244)