Futures Japan HIV陽性者のためのウェブ調査

調査結果

2.健康状態

HIV陽性とわかったときの状況

「HIV陽性であること」を知った時期については、1986年~2014年までと広範囲にわたり、中央値は2009年であった。2011年から2014年の過去4年間で知ったと回答した割合は、全体の366人(40.1%)であった(図2-1)。

図2-1 「HIV陽性であること」を知った時期(%、n=913)
図2-1 「HIV陽性であること」を知った時期(%、n=913)

HIV検査については504人(55.2%)が自主的に検査を受けたと回答し、295人(32.3%)が了解を求められて了解したと回答した。一方13人(1.4%)は、自分は了解していなかったが、家族・パートナー・付き合っていた相手は了解していたと回答し、58人(6.4%)は、自分は了解していなかったし、家族・パートナー・付き合っていた相手も了解していなかったと回答した。

HIV検査が行われた場所は、図2-2のように、病院(外来)と保健所の両方で約半数を占めたが、病院(入院中)や常設のHIV検査所など、その他も残りの半数を占め、多岐にわたっていた。

図2-2 HIV検査が行われた場所(%、n=913)
図2-2 HIV検査が行われた場所(%、n=913)

HIV検査を受けた都道府県については、東京都が最も多く321人(35.2%)、ついで大阪府147人(16.1%)、愛知県61人(6.7%)、神奈川県39人(4.3%)、北海道35人(3.8%)、福岡県32人(3.5%)であった。

HIV陽性判明時期を居住地域別に分析したところ、東海・北陸地域でより最近HIV陽性と判明した人が多かった。また、HIV陽性判明時期を感染経路別にみると、血液製剤による感染者の陽性判明時期は平均1990年で、他は概ね平均では2008年であった。

HIVの感染経路は、同性間性的接触が775人(84.9%)、異性間性的接触が55人(6.0%)、同性か異性かわからない性的接触が33人(3.6%)で、性的接触によるものは合わせて863人(94.5%)を占めた(図2-3)。性別でみると、男性873人では、同性間性的接触88.3%、異性間性的接触3.0%、同性か異性かわからない性的接触3.7%、血液製剤1.8%、輸血0.1%、注射針の共用0.8%、一方、女性34人では、同性間性的接触8.8%、異性間性的接触85.3%、母子感染2.9%であった。

図2-3 HIVの感染経路(%、n=913)
図2-3 HIVの感染経路(%、n=913)

現在の健康状態

最新のCD4細胞数(図2-4)は、120人(13.2%)が200個/μℓ以下、最新のHIVの血中ウイルス量(HIV-RNA)(図2-5)は498人(54.5%)が検出限界未満であった。

図2-4 最新のCD4細胞数(%、n=913)
図2-4 最新のCD4細胞数(%, n=913)
図2-5 最新の血中HIVウイルス量(%、n=913)
図2-5 最新の血中HIVウイルス量(%、n=913)

AIDS発症については、199人(21.8%)が医師からの診断を受けており、その内の118人は2013年からの過去5年間に発症したと回答した。また、医師からの診断は受けていないが、AIDS発症していると思うと48人(5.3%)が回答しており、その内の25人は2013年からの過去5年間に発症したと思うと回答した。612人(67.0%)は、AIDS発症したことはないと回答した。

慢性疾患の罹患についてたずねたところ(図2-6)、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、花粉症など)が190人(20.8%)と一番多く、次いで肝炎、精神・神経疾患の108人(11.8%)、歯や口腔内の疾患の107人(11.7%)と続いた。慢性疾患を具体的に回答した586人についてみると、33種類の慢性疾患のうち平均2.2種類が選択され、1種類が43.5%、2種類が27.5%、3種類以上が29.0%で、最高は11種類であった。一方、慢性疾患はないと回答したのは310人(34.0%)であった。

図2-6 慢性疾患の罹患 (%、n=913)
図2-6 慢性疾患の罹患 (%、n=913)

ここ数日の病気やけがなどによる自覚症状について43項目を示して選択してもらったところ(図2-7)、自覚症状がひとつもないと回答したのは、177人(19.4%)であり、その他はいずれかの自覚症状を訴えていた。自覚症状として多かったのが、体がだるい277人(30.3%)、肩こり215人(23.5%)、下痢209人(22.9%)、眠れない168人(18.4%)、かゆみ(湿疹・水虫など)168人(18.4%)、せきやたんが出る156人(17.1%)、腰痛154人(16.9%)であった。自覚症状としていずれかを選択していた733人についてみると、1~31項目が選択され、平均値4.9項目、中央値4項目であった。10項目以上を選んだ人も11.2%に及んだ。なお、挙げてもらった中で最も気になる自覚症状をひとつ選択してもらったが、体がだるい91人(10.0%)や下痢59人(6.5%)、不眠43人(4.7%)が上位であった。

図2-7 病気やけがなどによる自覚症状 (%、n=913)
図2-7 病気やけがなどによる自覚症状 (%、n=913)

参考までに、平成22年の一般住民対象の国民生活基礎調査の結果(入院者は含まない)(6)では、男性では腰痛、肩こり、鼻がつまる・鼻汁が出る、せきやたんが出る、手足の関節が痛む、が、女性では肩こり、腰痛、手足の関節が痛む、鼻がつまる・鼻汁が出る、体がだるい、が、各々上位の自覚症状となっており、これと比較するとHIV陽性者では、体のだるさや下痢、不眠が多い状況にあった。

健康上の問題による日常生活上の影響として、最も多いのが308人(33.7%)の「セックス」、次いで、167人(18.3%)が「仕事、家事、学業(時間や作業量などが制限される)」、101人(11.1%)が「外出(時間や作業量などが制限される)」と回答した。一方で、健康上の問題による日常生活上の影響が「ひとつもない」と回答したものは、429人(47.0%)であった。

現在の健康状態については、436人(47.8%)が「よい/まあよい」、295人(32.3%)が「ふつう」、「あまりよくない/よくない」は182人(19.9%)であった。

睡眠

過去1か月間の睡眠についてアテネ不眠尺度により調べたところ、回答のあった891人のうち49.2%が6点以上となり不眠症の疑いがあった(図2-8)。
全体的な睡眠の質については、71.9%が「非常に不満か全く眠れなかった/かなり不満/少し不満」と回答していた。

図2-8 アテネ不眠尺度による不眠症の疑い (%、n=891)
図2-8 アテネ不眠尺度による不眠症の疑い (%、n=891)

過去1か月の平均睡眠時間では、5時間未満が104人(11.4%)、5時間以上6時間未満が365人(40.0%)、6時間以上7時間未満が267人(29.2%)、7時間以上8時間未満が120人(13.1%)、8時間以上9時間未満が37人(4.1%)、9時間以上が19人(2.1%)と回答した。また寝ているときに悪夢や妙にリアルな夢をみて「かなり困っている/深刻な状態である」と10.0%が回答した。

参考までに、ファイザー社の4000人の一般住民を対象とした不眠についての調査結果(7)では、アテネ不眠尺度で6点以上の不眠症の疑いがある人は42.2%、全体的な睡眠の質は「非常に不満か全く眠れなかった/かなり不満/少し不満」が63.9%、睡眠時間は5時間未満が9.6%、5時間以上6時間未満が24.7%、6時間以上7時間未満が34.9%であった。また、10424人を対象としたインターネットの職場調査結果(8)や1306人の茨城県民を対象とした睡眠調査結果(9)でも、アテネ不眠尺度6点以上の不眠症の疑いがある人は、それぞれ28.5%、29.9%と報告されており、過去の一般住民を対象とした調査結果と比較して睡眠障害のある人の割合は、高い結果となった。

(6) 平成22年国民生活基礎調査.統計情報部、2011

(7) ファイザー株式会社.全国 4,000 名を対象にした『不眠に関する意識調査』 調査結果のまとめ.ファイザー株式会社、2011

(8) Soldatos CR, Allaert FA, Ohta T, Dikeos DG. How do individuals sleep around the world? Results from a single-day survey in ten countries. Sleep Med. 2005 Jan;6(1):5-13

(9) 茨城県睡眠調査.1306人(精神科・神経科受診者25名を除く).茨城県健康科学センター、2002